プロローグ
本当に美しいものは、何も完成された美しさだけではない。
この世に存在するもののほとんど全ては未完成だ。
私が思うに、我々が感じることが出来るのは『未完成の美しさ』のみなのではないか。
我々自体が未完成なのだ。
いや、でも未完成という完成形だとしたら……。
薄氷のようなガラス細工の美しさ。燃え盛る炎の美しさ。
これらは全て不安定で、すぐにでも消え壊れてしまいそうなものだ。
それらを何故私達は美しいと感じるのであろうか。
未完成だからなのではないか?
所詮未完の中の一人の私には分からない。
美しいということしか分からない。
それでもいいさ、美しいということが理解できる、それはすばらしいことなのだから。
美、それは至上である。
美、それは神にも勝って崇拝されるべき対象である。
美、それは私達の中にある信念。
美、それは絶望。
美、それは……。